ヘンデルクランツ通信 No9


10月21日(日)。爽やかな秋晴れ(だったかな?ヤバい、忘れた。認知症が心配)の中、いつもの江古田駅から大学のキャンパスに向かいます。建て替えの完了した1号館と、これまた現代的に変身した正門・守衛所を抜けて、木々の中をいつもの10号館に向かいます。本日は3階の練習室1での練習となります。事の経緯は割愛しますが、この部屋に、従来、講堂に設置されていた例の「ぼろピアノ」が移設されてきました。あまり広くない練習室に「ぼろ」とは言いながら、一応グランドピアノであります。音の方は兎も角、スペースが狭い…かと思いきや、結構快適な狭さと言うか、密度感があって悪くありません。他のパートの音が聴き取り易くて良さそう…なんて思っていたのは最初のうちだけ。後述する様に、練習の真っ最中ではそれどころでは無くなる訳ですが…。

本日の参加メンバーはソプラノ5名、アルト11名、テノール6名、バス5名の合計27名。アルトが強力であります。これは人数と言う要素だけではありません。一人ひとりの力量も強力と思います。我がテノールでは2週連続で長野から須田さんが参画して下さいました。「高音の出るテノール」の存在は頼もしいです。「じゃあ高音の出ないテノールって?」、それは私ですが…。

前回までの合計6回の練習で全8曲の一通りの譜読みと、全体を合せた練習を済ませた訳で、今回は最初に戻って、#4の”And the glory of the Lord”から#23の”All we like sheep”までの6曲を練習する事になりました。これらの曲のうち、前半3曲(#4、#8、#11)は9月2日以来の練習となる訳です。忘れちゃいますよね。必ず復習して練習に臨みましょう…って、これ自戒です。そんな訳で、「アレ?こんな曲だったっけ???」「次はどうなるんだっけ?」てな「新鮮」な感覚(と言うか「スリル」?)を味わいながら練習は進む訳です。いかんいかん!

#4. And the glory of the Lord

それほど長い曲ではありませんが、楽譜を眺めていると面白い事に気付きます…と言うか、今頃気付いたのかと言われそうですが…。
この曲の中に4つのメロディーが歌詞と対になって織込まれております。

旋律1:”And the glory, the glory of the Lord” の歌詞に対応。力強い感じの旋律。
旋律2:”shall be revealed,” に対応。旋律1と対照的にしなやかで美しい旋律。
旋律3:”And all flesh shall see it together” に対応。リズミカルで「踊っている感じ」の旋律。
旋律4:”For the mouth of the Lord hath spoken it,”に対応。旋律と言うよりも通奏低音的。

例外的な部分が81小節アウフタクトから83小節にかけてのアルト。歌詞は”shall see it together” なので、旋律3の後半部分に当たる筈なのが、ここでは旋律4に近くなります。
それから125小節からラストまでの下3声の ”for the mouth of the Lord hath spoken it,” も旋律4ではなくて旋律3となります。これは曲をフィニッシュする上で、終われる歌詞にしたと言う事でしょう。
これらの例外を除くと見事に上記の旋律1〜4と歌詞とが一致してます。で、旋律1は主にホモフォニー(4声同時に縦の線を合せて)で登場しますし、旋律2はポリフォニー(旋律1との組み合わせ有り)、旋律3は単旋律、又は2声(一部3声)のホモフォニーで登場します。この時に旋律4が旋律3を支える形で登場します。
これらの組み合わせでこの曲が構成されており、短いながらも非常に手の込んだ緻密な工芸品みたいな感じを受けます。このあたりを意識しつつ「楽しむ」余裕が必要と痛感します。やはり早く「からだ」に叩き込まないとダメですね。「ハラハラ・ドキドキ」のスリルは今回で終わりにするよう頑張ります。

#8. “O thou that tellest good tidings to Zion”

この曲はいきなりポリフォニーで開始されます。ここでは同度のカノン(同じ調性でのメロディーの追いかけっこ)が採用されております。「しーずかーなこーはんーのもーりのーかげーからー」と基本一緒です。それが10小節アウフタクトの ”arise,” (「起きよ!」、或いは「立ち上がれ!」)の鬨の声からは4声が揃ったホモフォニーになります。ここでバシッとタイミングを合せないとズッコケますので頑張りましょう。そして14小節の ”God!” が、ここでの頂点と言う事になります。
で、20小節アウフタクトから冒頭の “O thou that tellest good tidings to Zion” が再来しますが、ショッパナの時と同じ歌詞ながら、今度は “arise” からの流れを受けたホモフォニーです。ポリフォニーでは精緻な感じを受けますが、ホモフォニーではより力強い印象を受けます。従ってヘンデルは2度目の同じ歌詞ではホモフォニーを採用する事で力強さを表現したかったと言うことなんですかね。私の勝手な想像です。

#11. “For unto us a Child is born”

この曲は「ヘンデルクランツ通信」8月5日号(No3)で色々テキトーな解釈と説明をさせて頂きましたので、今回はやりません。
難関のメリスマ。テノールは最も短い1.5小節しかないにも関わらず散々な結果でありまして、面目ございません。m(_ _)m「高尾山」くらいちゃんと足で登れるように致します。

#21 “Surely He has borne our griefs” から#23 ”All we like sheep”にかけての3曲は、これまた8月19日号(No4)で書きましたので、ここでは止めにしておきます。

と言う事で、以上の6曲の練習を終了。なかなかハードですが、この後に更なる大曲となる2曲が控えている訳です。皆様、体力強化に努めましょう!

 

さて、話は「メサイア」から全く離れます。

私の実家は北区の田端にありまして、学生時代、頻繁に御入来された方もリーデルクランツ関係者には多くいらっしゃいます。で、この実家は時間が止まったような感じでありまして、「ものを捨てられない世代」の母親が大切なものからガラクタまで、まあ、色々溜めこんでおります。で、私が見かねて、ガラクタ整理をする訳ですが、先日、その中から面白いものを発見しました。リーデルクランツ現役時代の録音テープ(カセット)です。それを辛うじて生き残っているティアックのカセットデッキで再生し、ローランドのICレコーダーでAD変換した音源データを添付致します。私世代には実に懐かしいシロモノですので、是非、皆様にも共有化させて頂こうと考えた次第です。何分古くて保存状態も悪かった関係で、音が非常にプアで有る点はご容赦下さい。

かわしまアーカイブス

<会員限定>画像をクリックすると
録音データがダウンロードされます。

初めの2曲は林光編曲による「日本抒情歌曲集」から「箱根八里」と「椰子の実」、1978年3月頃。たぶん、春合宿前の新歓用の練習風景のようで、指揮は当時の副指揮だった伊達さん。「箱根八里」が始まる前に四の五の言っているのが当時の学指揮だった私です。因みに「椰子の実」のテノールソロもお恥ずかしい限りですが私です。2番のソロのところで、たぶんパーマさんと思われる人の盛大なクシャミ2連発に動揺して(と、人のせいにする)、ソロをヘマする様子も録音されております。合唱は荒削りで音程も怪しかったりしますが、実に元気です。場所はたぶん大学3号館のどこかの教室で、足踏み式のオルガンが設置されていたと記憶しております。

その後の7曲は、小グループの発表会のようです。当時、毎年、小グループと言う活動をやってまして、次期学指揮の選考とか、指導する立場を経験するとか、少ない人数で合唱(パート)を支えるとか、色々な目的が有ったものと記憶しております。場所はたぶん大講堂です。傍らをクルマが通過する騒音が聴き取れますので。当時を知る古老、いや、関係者である小林さん宅にも同様のテープが残っているそうでして、そちらの記述によりますと、1978年10月31日の録音と言う事が解りました。内容は便宜的に小グループAが私と同期の関口和代さん指揮で、「涙をこえて」、「僕にまかせて下さい」、「遥かなる友に」の3曲。グループBが同じく同期の向山(旧姓:福田)理香さん指揮で、「水のいのち」から「雨」、「汽車ポッポ」、「夜の歌」。最後のグループCは伊達信寿さん指揮によるハイドンの「四季」から「来よ我春」となっています。

内輪の発表会と言うお気楽モードのせいか、2グループがそれぞれ1回づつ、途中でヘマしてやり直しになりますし、全般的に練習不足っぽいですが、ご愛嬌。当時のリーデルクランツは総勢50名弱だったと思いますので、3つに分けて指揮者とピアノ伴奏を出したとして、1グループ12名程度だったのではないかと思います。つまり現在のリーデルクランツ現役メンバーと同程度と言う事になります。
1978年10月ですので、今年の45定参加メンバーですと第11代の相原さん、小林さん、佐藤(旧姓:下村)さんが4年生。第12代の大内会長、戸原(見沢)さん、諸井(白鳥)さん、それに川島が3年生。渡辺(星)さん、筒井(守田)さん、佐竹さん、パーマ(本名:渡辺)さんが2年。小林(竹田)さん、茂垣(清田)さんが1年生で参加されていると言う事になります。誰がどのグループに所属しているか、お判りになりますか?簡単に判る人も何人かいますね〜。
(録音内容はこちらのPDFファイルで)

 

さて、タイムマシンから現代に戻って、次回の練習は11月4日(日)12:00〜15:00。場所はStudio1619となります。時間も場所も普段と異なりますのでご注意ください。
また、音痴では無いけど方向音痴である等の事情で現場にたどり着く自信の無い方は、11:50までに江古田駅改札にお集まり下さい。私、川島がご案内致します。
また当日は白雉祭と言う事ですので、練習終了後、ちょっくら様子を見に行くと言うのも一興かと存じます。
それでは次回、お会いしましょう。

川島


[編集後記]
川島さん。たしか「時間があるときにでもアップしておいて」とおっしゃっていたのでは?、時間が無いことにして先送りにしようと思っていたのに〜。ヘンデルクランツに書かれちゃうとアップしないわけにいかないじゃないですか(笑)

てなことでアップしました。
本来曲名をファイル名にして個別にアップしたいのですが、日本語だと文字化けが発生しアクセスできなくなるかもしれません。そのためzip型式で圧縮してあります。圧縮を解凍すと日本語のファイル名で展開されるはずです(通常ダウンロードしたファイルをダブルクリックすれば解凍されます)。iTunueを使われている方はアルバムとして取り込まれます。アートワークも昭和のレコードジャケット風に作成してみました。(^Д^)

TongSing